私が携わる仕事の現場で肝となるのは、「つくる」です。
新商品をつくる、
新ブランドをつくる、
広告や企画書などで読み手の心つかむためのワンフレーズをつくる、
そして、写真の撮影や、ちょっとしたサウンドロゴの作成などなど。
「つくる」という言葉には、「作る」「創る」「造る」などの漢字が当てられ、
それぞれ目的に応じた使い分けがされています。
いずれにしても、共通するのはそこに「魂」(ライトな表現でいえば”気持ち”)を入れて「つくる」ことが価値を生むということです。
工場の生産ラインに乗せただけでは新しいものに価値は生まれません。
クライアントさんと「つくる」ための打合せを重ねていくと、皆さん気持ちを込めてつくるので、途中で必ず煮詰まってしまったり、候補が絞りきれずに悩み込んでしまったり、どんどん道を逸れてしまって何をやっているのか収集がつかないことになってしまったり、、、
まぁ、いろいろ障壁に遭遇するわけです。
そんなときに私がクライアントさんへお伝えするのは、
「アーティストになったつもりで取り組んでいきましょう。」ということです。
最近、「デザイン思考」なる言葉がビジネスシーンにおいて浸透しつつあります。
ざっくり言うと、いろいろなビジネスの現場に、デザイナーがデザインするときの思考を応用していこうという考え方ですね。
いろいろな書籍も出ています。
私は、このような考え方にはとても共感しますが、ニュアンスというか、私が伝えたい話とは少し違っているので、私は「アーティストになったつもりで」という伝え方をしています。
さて、ではこの「アーティストになったつもりで」という意図が何であるか、ですよね。
たとえば、あなたが新しいブランドをつくりたいとしましょう。
ブランドに必要なものは、名前、ロゴ、ヴィジュアルのコンセプト、それらを元にパッケージや、ホームページ、商品の写真、キャッチフレーズなどなど、それらを順番に作り上げていくことになりますよね。
そこで、クライアントさんに私が頼るものというのが、数字などのデータ。
ではなく!アーティストの様なクリエイティブな精神状態と思考回路なのです。
もちろん情熱だけでブランドは出来上がりません。数字などマーケティングも不可欠でしょう。しかし、そういったデータより優先的に「クリエイティブな精神状態と思考回路」なのです。気持ちだけはあって取り組んでも、この思考回路や精神性にならない限り、解決しない苦しみにぶつかってしまうのです。
ブランド名を考えるときには、曲を書いているソングライターのつもりで。
ビジュアル的なコンセプトを決めていくときにはデザイナーや写真家になったつもりで。
キャッチフレーズを決めていくのも然りです。
ロゴをつくる際は、あなたがバンドを結成してバンドのロゴを考えることになった様なつもりでも良いでしょう。
ビジネスマンとして仕事をしてくると、「つくる」ときにも、どうしてもビジネスライクに進めてしまいがちです。しかし、その思考回路のまま「つくる」のは、デザイナーである私でも究極に難しいことです。
もちろん、プロのミュージシャンにしても商業的な面を意識して曲作りをしているひとは多いです。しかし、曲を書いているまさにその時、ビジネス的な思考のみで曲を書いているひとはいないでしょう。いるとすれば、それはやはりビジネスマンであって、私のいう「アーティスト」とは違いますよね。そもそもその思考回路で曲が書けるのはある意味、稀な才能ですが。
しかし、ほとんどの商業ミュージシャンは作曲するひとであれば、ビジネス的思考と、アーティストとしての思考のスイッチの切り替えが皆さん出来ているはずなのです。
ミュージシャンは、先に音楽というクリエイティブな「アーティストの思考回路」を持ってから、ビジネスに関わり始めることで「ビジネス的思考」も兼備しました。
あなたがもしビジネスマンとしてスタートして、これから何かを「つくる」ことになったのならば、次に持つべきものこそが「アーティストとしての思考回路」なのです。
持つべき思考回路が2種類あったとして、どちらを先に持ったかの違いはあれど、いずれはどちらも必要だったと考えてくださいね。
情熱や、心のなかにある感覚をかたちにするのは苦しみも伴います。
ぜひ、アートの世界に身を置いて、
”これは自由なクリエイティブ活動なんだ”という目線で持って、そのビジネスに取り組んでみましょう。自分と向き合うことにもなりますし、
きっとこれまでに成し得なかった成果を掴むことができるはずです。
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